患者が薬局で支払う会計は、調剤技術料、薬学管理料、薬剤料、医療材料費を合計した「調剤報酬点数(1点=10円)」をもとに算出されます。これは患者がどの薬局を利用しても同じ金額でサービスを受けられるようにするための決まりです。薬局はサービスの報酬を独自に設定できないため、調剤報酬点数での評価の高い取り組みを優先的に進めることが、収入を確保するための重要な策となります。
調剤報酬点数は厚生労働省の諮問機関である「中央社会保険医療協議会」によって2年に一度改定されます。ここでは、2020年(令和2年度)の改定で新設された項目や見直しが加わった項目について詳しく見ていきましょう。
2020年度の調剤報酬改定で新設された項目
2020年度の改定では「かかりつけ機能の評価」「対物業務から対人業務への構造的な変換」「在宅業務の推進」「ICTの活用」「後発医薬品の使用推進」「残薬への対応の推進」に重きが置かれました。それによって新設されたのは以下の評価です。各項目の要件と点数をまとめました。
服用薬剤調整支援料2
目的 | 複数の医療機関を受診する患者の重複投薬の解消 |
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対象 | 合計6種類以上の薬剤が処方されている患者 |
要件 | 患者等の求めに応じて、 ①服用中の薬剤について一元的把握を行う ②重複投薬や副作用のおそれがある場合、当該提案や服用薬剤の一覧を含む報告書を作成し、処方医に処方変更を提案した際に算定 |
点数 | 100点 (3カ月に1回まで) |
薬剤服用歴管理指導料 特定薬剤管理指導加算2
目的 | がん患者に対する薬局での薬学的管理の充実 |
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対象 | 医療機関で抗悪性腫瘍剤を注射された患者で、当該薬局で抗悪性腫瘍剤や制吐剤等の支持療法に係る薬剤の調剤を受ける患者 |
要件 | ①レジメン(治療内容)等を確認し、必要な薬学的管理及び指導を行う ②患者や家族への電話等により、抗悪性腫瘍剤や制吐剤等の支持療法に係る薬剤の服用状況や副作用の有無を確認 ③その結果を踏まえ、患者が通う医療機関に必要な情報を文書により提供した場合に算定 |
点数 | 100点(月1回まで) |
薬剤服用歴管理指導料 吸入薬指導加算
目的 | 吸入薬の使用についての丁寧な指導の充実 |
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対象 | 喘息または慢性閉塞性肺疾患の患者で吸入薬の投薬が行われている患者 |
要件 | ①文書及び練習用吸入器等を用いて吸入手技の指導を行い、患者が正しい手順で吸入薬を使用できているか確認 ②そのうえで医療機関に必要な情報を文書で提供した場合に算定 |
点数 | 30点(3カ月に1回まで) |
薬剤服用歴管理指導料 調剤後薬剤管理指導加算
目的 | 糖尿病治療薬(インスリン等)の適正使用の推進 |
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対象 | インスリン製剤等を使用している糖尿病患者で、新たにインスリン製剤等が処方された患者またはインスリン製剤等に係る投薬内容の変更が行われた患者 |
要件 | 患者等の求めに応じて、 ①調剤後に電話等により、その使用状況、副作用の有無等について患者に確認し、必要な薬学的管理指導を行う ②そのうえで医療機関に必要な情報を文書で提供した場合に算定 |
点数 | 30点(月1回まで) |
経管投薬支援料
目的 | 簡易懸濁法※を開始する患者の支援 |
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対象 | 胃ろう・腸ろうによる経管投薬、または経鼻経管投薬を行っている患者 |
要件 | 医療機関等からの求めに応じて、 ① 簡易懸濁法に適した薬剤の選択の支援 ② 患者の家族または介助者が簡易懸濁法により経管投薬を行うために必要な指導を行う ③ 医療機関への患者の服薬状況及び家族等の理解度に係る情報提供(必要に応じて) |
点数 | 100点(初回のみ) |
※錠剤粉砕・カプセル開封をせずに、投与時にお湯等に入れて崩壊・懸濁を待ち、経管投与する方法
2020年度の調剤報酬改定で点数が変更された項目
厚生労働省は、現在国家戦略特区でのみ実施されている「オンライン服薬指導」を2020年9月1日から全国的に認めると決めました。それに備えて、最新の調剤報酬には「オンライン服薬指導」にも点数が設けられています。また、薬剤師の業務の中心を対物業務から対人業務へ転換させることを目的に、内服薬の調剤料については評価が見直されました。改定後の点数は以下の通りです。
薬剤服用歴管理指導料
改定前 | 改正後 | ||
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原則6カ月以内に再度処方箋を持参した患者に行った場合 | 41点 | 原則3カ月以内に再度処方箋を持参した患者に行った場合 | 43点 |
上記の患者以外の患者に対して行った場合 | 53点 | 上記の患者以外の患者に対して行った場合 | 57点 |
特別養護老人ホーム入所者に対して行った場合 | 41点 | 特別養護老人ホーム入所者に対して行った場合 | 43点 |
該当項目なし | オンライン服薬指導を行った場合 | 43点 |
分割調剤時の服薬情報等提供料の取り扱い
目的 | 薬局における対人業務の評価の充実 |
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対象 | 医師の指示によって分割調剤を行う場合 |
要件 | 分割調剤において、2回目以降の調剤時に患者の服薬状況や服薬期間中の体調の変化等について確認し、その結果を処方医に対して情報提供する。処方医に情報提供した内容は薬剤服用歴の記録に記載する。 提供する情報には以下の事項を含める。 ・残薬の有無 ・残薬が生じている場合はその量及び理由 ・副作用の有無 ・副作用が生じている場合はその原因の可能性がある薬剤の推定 |
点数 | 分割回数で除した点数ではなく、通常の点数(30点)を算定 |
調剤料(内服薬)の見直し
1~7日分 | 8~14日分 | 15~21日分 | 22~30日分 | 31日分~ | |
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改定前 | 5点/日 ※最大35点 ※平均27点 (H30年度実績) | 4点/日 ※最大63点 ※平均61点 (H30年度実績) | 67点 | 78点 | 86点 |
改定後 | 28点 | 55点 | 64点 | 77点 | 86点 |
「時代の流れ」を見据え、利用者に必要とされる薬剤師に
2020年度の改定では、「重複投薬解消に対する取り組み」や「医療機関への情報提供」などが高く評価されるようになりました。また、薬剤服用歴管理指導料の点数が低くなる再来局期間が6カ月から3カ月に短縮され、同一薬局の利用推進が図られたこともポイントです。薬剤師には今後ますます、対物業務から対人業務への転換やチーム医療への貢献が求められるようになるでしょう。
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